
最初にこの本を「これあげる」って先輩から渡されたときは、「友だちは無駄である」という題名からして、その先輩も、この作者も、タモリさんみたいに「友だちなんていらない」って姿勢なのかなって思った。 でも内容は180度違ってた。前回紹介した背表紙の言葉。
「友だちというものは無駄な時をともについやすものなのだ。 何もしゃべることなぞなく、ただ石段にすわって、 風に吹かれて何時間もボーっとしたことのある友だち。 失恋した友だちにただふとんをかぶせる事以外何も出来なかった日。 中身が泣いているふとんのそばで、わたしはかつおぶしをかいていた」。
「無駄だから友だちはいらない」のではなく「無駄だからこそ友だちなのだ」という本なのだ。
佐野洋子さんはこの本の中でこう言っている。
「私はやはり、小学校の時の中国で知り合った友だちと二度と会えなかったということを、ひじょうに残念に思う。生まれた土地で、小さな芽がそのまま大きな木に育つようなことがなかったことを、さびしいと思うことがある。」
「友情とは年月のことである。子どもの時はたがいが遊び道具であっても、年月が人生を教える。私は友だちをわたり歩いて、たくさんの友だちをつくった。年を取ったら一緒に養老院に行こうといい合う友だちも持って、いい友だちを持った幸せを感じるが、静岡へ返って、生まれた土地で、ずっと毎日何十年も友だちやっている同級生を見ると、地面からはえている林のようなうらやましさを感じる」
地元で一緒に生まれ、育った同級生たちが今でも仲良くしている姿をSNSで見たりすると、心がざわざわして、大きな劣等感を感じる。
気になった方はぜひお手にとってみてください。