銀座の猫じじい

銀座に行くと思い出す風景がある。

休日の歩行者天国になっているメインストリートの看板の上に、派手なピンク、ブルーのシュシュをそれぞれつけた小さな子猫が2匹、降りられそうもない高い看板の上で少し震えている。

「かわいいーーー!!!」と黄色い声をあげながら集まり喜んで携帯で写真を撮るカップルや、OLらしき女性たちやおじさん等様々な人々。

群衆はどんどん膨らんでいく。

 

Naverまとめ【虐待か】たびたび目撃される看板猫と「猫おじさん」にまつわる黒い噂

 

子猫たちは不安げにどこかを見つめている。

吐き気を感じた。わざわざこんな場所で猫を見世物にして喜ぶ飼い主の行為以上に、それを「かわいい」と写真を撮る人々の群れに。

耐えきれず前に出て、猫たちを下ろした。賛同してくれた女性と警察を呼ぼう、それまではここで猫たちを見守ろうと話をしたそのとき、ある中年男性が私たちを非難した。

時間が経ってしまってうろ覚えだけど、その男は猫の写真を撮りたかったらしく「猫が降りられる場所に置いてなにが虐待なんだよ!? 勝手に正義感ぶりやがって」というようなことを汚い言葉をつかって罵ってきた。
(ちなみに私が見たときの猫は小さすぎて、とてもじゃないけど軽々と降りられる高さではなかった)

なんだかんだといろいろ言われても猫をこんな場所に放置して良いと思う理由が、到底私には理解できない。

口論になった。周囲は写真を撮れなくした私の行為にきつい視線を向け、なにか非難らしき言葉をひそひそと口にしていた。

女性が呼んでくれた警察が到着してその場を引き渡し、私はむかむかしたまま吐き出しようのない思いを抱え銀座を後にした。

小津映画に出てくるような、ブティックや名店が集まる歴史ある銀座という街に、上京して随分経ってもわたしは憧れの気持ちを抱いていた。

でもそれ以来、そんなイメージは持てなくなってしまった。

動物虐待に対して様々な考え方があるのは承知の上で、私ははっきり、これは動物虐待だと断言する。

 

「 SNSでアップする写真にどうやったら”いいね”がつくか」が情報番組で特集されるこの時代だからこそ、その対象にカメラを向けるということの意味を一度考えてほしい。

そりゃいいねが多くつけば私も嬉しいけどさ。

自分が発信するなにかが自分自身の態度と言葉を表し、それが時にはだれかを深く傷つけることになる。

 

人の群れっていうのは恐ろしいものだ。

人が死んでも彼らは好奇の色が顔に出ないように押し隠しながらスマホを向けるんだろう。だったらその死体を踏みつけて笑うほうがよっぽどましだ。

諍いも含めた、あんな風景を見るのが愉快で、猫じじいはそんなことをしているんだろうか。

何度も警察に注意されてるらしいけど、もういい加減懲りたんだろうか。

 

と、なんだか複雑な思いをよみがえらせながら、賑わう夜の銀座を後にする。

 

 

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